新興国の産業が高度化し,先進国と競合し始めている状況に対して,コスト競争に陥ることなくイノベーション創出により対応することは,先進国の雇用と産業にかかわる枢要な課題です.また,少子高齢化や環境負荷の増大などに起因する諸々の社会問題を解決するイノベーションを生み出すことが,経済成長の源泉になると期待されています.
先進諸国は新自由主義的な制度改革によってそれを実現しようとし,貧困・所得格差や金融不安定性などの問題を生み出しています.もちろん北欧諸国もこの趨勢と無縁ではありません.それでもなお,多大な葛藤と苦慮を経験しつつも,福祉国家の骨格を維持するために様々な福祉サービス改革が進み,なおかつイノベーション創出,産業構造の転換,労働生産性の水準においても高い成果を誇っていることは特筆に値すると思われます.
これらの進化の原動力はどこにあるのでしょうか?ここに,北欧諸国の社会経済諸制度がイノベーション創出といかに関係しているのかを明らかにするという研究課題が浮上します.ここではイノベーションを,いわゆる社会イノベーションを含む広義のものとして捉えています.そこで,北欧,特にフィンランドの社会経済体制とイノベーション創出の関係について,以下の4つの次元で調査・分析・考察する研究を進めています.
*(1):Ville Valovirta氏(フィンランド国立技術研究所)との共同研究を含む.
*(2):Marja Känsälä氏(フィンランド国立労働衛生研究所)との共同研究を含む.
*(3):藪長千乃(東洋大学),柴山由理子(東海大学)両氏との共同研究.
*(4):福島淑彦(早稲田大学),柴山由理子(東海大学)両氏との共同研究.
*科研共同研究によるパイロット調査の簡単な報告は,リンク先にあります.
Transforming the Role of Public Policies for Innovation: Governing the Evolutionary Process (May 30, 2016). Available at SSRN: http://ssrn.com/abstract=2786437