財務省資料の6ページでは,「在学者一人当たり年間公財政教育支出」を示していて,「公財政支出を在学者一人当たりでみると、OECD平均と比べて遜色なく、G5諸国と同水準」だという主張がなされている.ここでの計算方法には疑問がある.結論的に言うと,数値が「かさ上げ」されて算出されるからである.
計算方法のポイントは,「在学者一人当たり年間公財政教育支出」を「国民一人当たりGDP」で割っていることである.ここで在学者数をNs,年間公財政教育支出をEe,人口をN,GDPをYとすると,算出しているのは(Ee/Ns)/(Y/N)=(Ee/Y)*(N/Ns)である.もちろんEe/Yは,GDPに占める教育向け公共支出の割合である.ところで日本は高齢化が急速に進んでいるから,N/Nsは他国に比べて高い.したがって,他国に比して「GDPに占める教育向け公共支出の割合」が低くても,大きい値をとるN/Nsを掛け合わせることで,6ページの数値はかさ上げされる.
もう一つ.(Ee/Ns)/(Y/N)で,日本よりも一人当たりGDPが高い国は欧米で多いので,Ee/Ns,つまり在学者一人当たり年間公財政教育支出もまたY/Nで割り算することでかさ上げされる.
つまり,財務省資料は,少子高齢化が進むから,また,日本は一人当たりGDP(→「労働生産性」と概ね読み替えられる)が低いから,教育向け公共支出を削減することが適当だ,と言っていることになる.それが本当に正しいのかどうか,教育現場に即した検討を,きちんと行う必要がある.