「フィンランド教育」の視察ブームが過ぎて

今回の滞在で思いがけず耳に入ったのは,政治家による「視察」のこと.「フィンランド教育」の視察ブームは過ぎ去って,現在では「オンカロ」視察ブームらしい.両方の視察ブームには,失笑を禁じ得ない話も,また笑うに笑えない話も多々あるとのこと.特に「笑うに笑えない話」の方は,納税者が聞けば頭に血がのぼるに違いない話題だった.

 

さて,フィンランド教育の視察についてだ.視察が繰り返されたが,日本の教育が変わったようには見えない.好意的に解釈すれば,教育の文化を変えるのは一朝一夕では行かないと言うことだろう.だが率直に言って,乏しい教育財政の問題をまずは解く必要があると思われる.

 

以下の図は,OECD Education at a Glance 2014から,試しに作成してみたものである.この図は,初等・中等教育に対する公的支出の対GDP比率を表す.フィンランドは4.2%,日本は2.7%,OECD平均は3.6%である.最高はノルウェーの5.3%であった.

同様に,高等教育に限って作図してみたのが下の図である.フィンランド2.2%,日本0.8%,OECD平均は1.4%であった.最高はやはりノルウェーで2.6%であった.


表面的に「教育方法論」をなぞっても,財政基盤が日本とここまで違っていると,刷新に向かうことは難しいのではないか.何と言っても日本は,文部科学省ではない省庁からこういう資料が出されて,少人数教育方針が後退しそうな国である.GDP比で大きな財政支出をしてでも,教育を社会として支えなくてはならないという,その考え方こそ学ぶ必要があるように思われる.


さて,視察ブームの大波が去ったが,何が学ばれたのだろうか.


(追記)件の財務省資料,あそこでの計算方法だと,日本の教育公共支出は嵩上げされて算出される.あの計算方法が正当なのか,疑問がある.詳しくは,別途検討したい.