工科系大学で働くようになってから,技術というものが今まで以上に気になるようになった.それはそうだ,ほぼ毎週,技術系院生の研究プレゼンを聞いているのだし,一家言ある先生たちとお付き合いさせていただいているのだから.
こんなことは先刻周知と怒られそうだけれども,一つ最近思うのは,所望の機能を果たすために最低限のエネルギー消費で,つまりはできる限り自然界の作用を利用したデザインというのが理にかなっているのではないかということだ.
この写真は,フィンランドで部屋を借りるとたいていキッチンに付いている設備だ.外観はまったくの収納棚なのだが,扉を開けると実は食器乾燥器.とはいえ電気を使うわけでもなく,洗った食器を「干す」といった感じ.この下は流しなので,水が滴下するのも問題ない.理にかなっているなあといつも感心する次第である.
食器を乾かすというと,「電気で温風を使うか?」「いやガスで乾かそうか?」という議論をすぐに始めてしまいそうな私自身だけれど,知恵を絞って理にかなったシンプルさを実現するという欧州的なあり方には学びたいといつも思う.
これまた思いつき的な仮説なのだけれど,製品の姿というのは,その組織なり社会なりの姿を,あたかも鏡像のように反映しているのではないだろうか.もちろん単純な「反映」というのは,社会現象である以上ありえないのだけれど,関係性がよく整理されていない組織はやはり,関係性が整理されていない製品を生み出すのではないだろうか.直感ではあるが,「北欧デザイン」等々を安直に真似するだけではすまない問題がここにはあるように思う.
では,「よく整理されていない組織」とはどういう組織なのか?これについては,夏までには出版されそうな,共同研究成果の本の中で,共同研究者のある先生が分析している日本企業の製品開発組織に関する結果がとても示唆的だった.また改めて論じたいと思う.